2019年9月5日に『テロリズムの心理学』が発売されました。
私も「第2章 テロリズム発生における社会心理学的メカニズム」を執筆しています。
目次
縄田の担当章「第2章 テロリズム発生における社会心理学的メカニズム」に関して
テロリズムは近年,社会心理学からアプローチした研究が増えています。
本章では主に集団間紛争の視点からテロリズムを理解すべくまとめました。
・社会的アイデンティティ,集団アイデンティティ
・アイデンティティ融合
・集団間感情と集団間代理報復
・社会的報酬
・進化心理学
など社会心理学研究のトピックから,テロリズムとテロリストを理解する研究知見を紹介しています。
ご覧いただけますと幸いです。
第2章 テロリズム発生における社会心理学的メカニズム 【縄田健悟】
1.はじめに
2.集団アイデンティティ
3.テロリストにとって得となる社会構造
4.今後の展望として
本書全体に関して
日本国内でのテロリズムの心理学に関する詳しい本は初めてではないでしょうか。
第1章が,編者・越智先生が国内外のテロリズムの動向と心理学研究の動向をバランス良くまとめています。
第2ー4章が,社会心理学の視点からのアプローチです。
第2章は,私・縄田が執筆し,上述の内容です。
第3章は,杉浦仁美さんが,集団間紛争に関する社会心理学の実験研究を中心に紹介した章です。
第4章は,釘原直樹先生が「テロリズムに関連する集団現象の光と影」として,ジェノサイド,パニック,緊急時援助の3点から集団のダークサイドを紹介されています。
以上の3章分は,社会心理学者の私には馴染みのあるもので,逆に社会心理学がいかにテロリズムにアプローチし,貢献できるかという萌芽を示すものではないかと思います。
第5章から最後の第10章までが,グッと応用実践的な犯罪心理学研究としてのテロリズムの話になります。
執筆者も,(元含め)科捜研・科警研の方が多く入り,テロリズムを未然に防止したり,事後にテロの犯人を検挙していくかという犯罪捜査的な視点が中心になってきます。
この内容で書けるのはこの執筆陣だけではないでしょうか?
普通に,というと変かもしれませんが,普通に心理学を勉強していてもなかなかフォローできない話がほとんどですね。
私も知らない話ばかりで,大変勉強になりましたし,今後折に触れて参照させていただきたい内容です。
第5章 テロリストの行動パタンとプロファイリング 【大上 涉】
第6章 テロリストの検出とテロ計画の情報収集 【平 伸二】
第7章 国家が主導するテロリズム 【大上 涉】
第8章 日本におけるハイジャックとその分析 【入山 茂】
第9章 テロリズムと人質事件 【横田賀英子】
第10章 テロリズムのPTSD 【松本 昇】
というわけで,国内の状況も踏まえて書かれた唯一の「テロリズムの心理学」の本です。
この執筆陣でしか書けない内容となっております。
お手にとっていただけますと大変嬉しいです。
ちなみに,日本語で読める数少ないテロリズムの心理学の本としては,翻訳本としてこちらもあります。合わせて紹介まで。
- 作者: 釘原直樹,ファザーリ M.モハダム,アンソニー J.マーセラ
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2008/03
- メディア: 単行本
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (3件) を見る